レセプトオンラインの概要

 レセプトオンライン化は2段階からなります。第一段階はレセプト電算処理システムへの対応です。第二段階がオンラインによるレセプト電算処理システムへの対応です。



レセプト電算処理システムへの対応

 オンライン化の最初のステップは電子レセプトを作成することです。この電子レセプトを「レセプト電算処理システム」(以下レセ電算と省略)といいます。電子レセプトはレセコンで作成され、基金や連合会に渡され、最終的に保険者に届きます。レセコンも非常に多くの種類があります。基金や連合会、保険者も沢山あります。それぞれが勝手な仕組みで電子レセプトを作ったのでは相互に電子レセプトを読めなくなります。全ての関係者の間で電子レセプトを流通させるには規格の統一が必要です。この規格が「レセプト電算処理システム」です。

 レセ電算は、病名や処置のコードを定めた「標準マスター」、電子レセプトのフォーマットを定めた「記録条件仕様」、電子レセプトのエラーチェックの方法を定めた「標準仕様」から構成されます。これらの情報は厚労省の「診療報酬情報提供サービス」を通じて公開されていますので誰でも入手可能です。

 レセ電算では、この仕様に沿った電子レセプトをレセコンで作成し、FD、MO、CD-Rなどの記録媒体に記録して基金や連合会に提出します。歯科では来年3月から受け入れが開始されることが正式に決定しています。

 実際のレセ電算への対応は、レセコンの開発会社が行います。レセコンのユーザーの立場ではレセ電算対応のレセコンを入手することが最も基本的なオンライン化への対応です。レセ電算対応のレセコンの入手方法には
   新規購入
   有償/無償 バージョンアップ
   買換え
などが考えられます。もうそろそろ各社の対応がはっきりする時期ですので、お使いにレセコンメーカーに問い合わせて対応状況を確認すると良いでしょう。


オンラインによるレセプト電算処理システム

 レセ電算で作った電子レセプトを記録媒体に記録して郵送するのではなく、通信回線を使って電子レセプトのデータを送信するのが「オンラインによるレセプト電算処理システム」(以下オンラインレセ電と省略)です。ちょうど手紙が電子メールに置き換わったようなものです。

 送るデータはレセ電算の電子レセプトと全く同じものです。電子メールのイメージと言いましたが、送信操作は電子メールというよりブログの更新に近い感じです。送信ソフトといっても実はインターネットエクスプローラーやFireFoxといった普通のブラウザです。基金や連合会のサイトに接続してユーザーIDとパスワードでログインします。裏では電子証明書によるユーザー認証が行われています。

 電子レセプトの送信操作は、ちょうど画像をアップロードするのと同じです。ボタンを押して送信する電子レセプトのファイルを選択して送信します。送信時に「事務・点検ASP」というサービスを受けられます。(よいうより受けないといけません。)「事務・点検ASP」とは「標準仕様」に基づいたレセプトのエラーチェックをするサービスです。このチェックに合格した電子レセプトだけが基金や連合会に送信できます。無理に送信することもできますが、基金内で全く同じ検査をしてエラーがあれば例外無く返戻されますので、送信する意味がありません。間違いは修正して再送信します。送信が完了すると「受領書」というファイルをダウンロードできますので、証拠としてダウンロードして保存します。

 オンラインレセ電は電子レセプトを送信するだけのシステムではありません。増減点通知や返戻処理もオンラインで行います。増減点通知書はCSVファイルで提供されますのでパソコンでの二次利用ができます。返戻レセプトも紙では無く電子的にやり取りされます(現時点では希望者だけ、希望しない場合は紙に印刷されたレセプトが返戻されます。処理は従来通り)ダウンロードした返戻電子レセプトは再度レセコンに取込んで修正し、再提出ファイルにまとめて送信します。

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オンラインレセ電に必要なもの

 オンラインレセ電を開始するには次のものが必要です。
   レセ電算対応レセコン
   送信専用パソコン
   通信回線
   送信用ソフト
   電子証明書
   安全対策規定

 レセ電算対応レセコンは上記の通りです。

 送信用パソコンはレセコンと別のものを用意します。(同一でも良いというようにガイドラインが改定されるという噂もあります。)一般的なwindowsのパソコンでOKです。低スペックの低価格のパソコンで十分です。セキュリティ的には送信用パソコンは送信業務だけに使うように限定するほうが良いでしょう。余分なアプリのインストール、インターネットに接続してのメール交換やホームページのブラウズはウイルスやハッカーの侵入を許し取り返しのつかない事態を招くでしょう。また送信用のパソコンを院内で誰でも触れるような状態には絶対にしないことです。情報漏洩の最大の経路は過去の事例をみてわかるとおり身内の人間です。

 送信用ソフトは基金から無料で提供されます。オンラインレセ電の申請をするとソフトを送ってきますのでマニュアルに沿ってインストールします。電子証明書は3年間の有効期限があり費用は3年で4000円です。3年たったら再申請します。

 安全対策規定は安全にオンライン請求を行うためのさまざまな決まりを書いた文書です。文書に従って日々の業務を行います。規定文書の雛形がありますので自院に合わせて修正し、院内に常備します。

電子メールはインターネットを介して送信されますが、インターネットという回線は公衆に公開されたような回線ですので、そのままでは「なりすまし」「盗聴」「ハッキング」などの犯罪、迷惑行為の被害にあってしまいます。レセプトという最高ランクの個人情報を扱うにはインターネットは危険すぎます。

 そこで安全性を確保するために、3つの回線が用意されています。
   ISDN
   閉域IP-VPN
   オンデマンドVPN

 ISDNは完全に専用の電話回線ですので物理的には一番安全な回線です。介護保険などの請求にも利用されています。しかし通信速度が遅くオンラインレセ電には向きません。ただし離島も含めて完全に全国をカバーしていますのでお住まいの地域によってはこれしか選択肢が無い場合もあります。

 閉域IP-VPNはNTT東(西)日本が提供するインターネットとは独立した閉域(加入者が限定される)ネットワークです。この比較的安全なネットワーク内にVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)という仮想的な専用線を構築し、医院と基金(連合会)を結びます。具体的な商品名は光通信の「Bフレッツ」、ADSLの「フレッツADSL」です。

 高速で安全な通信路で、同じ料金内でインターネットへの接続サービスも受けられるので費用的にも一番安い方法です。すでにBフレッツに加入されている場合は追加の費用は必要ありません(厳密にはハブなどの追加機器代がかかります。)。設定も一番簡単です。基金から提供される送信ソフトを使えば面倒な設定はほとんどありません。しかし、他の通信業者を利用している場合は利用できません。新規に回線を引くならこれがコスト、手間ともに一番簡単です。

 オンデマンドVPNは、インターネット回線内にIPsecとIKEという特殊な技術を使い仮想的な非常に安全性の高い専用回線を構築する技術です。NTT以外のインターネット回線をすでに利用している場合には、この回線を利用します。オンデマンドVPNを使うにはオンデマンドVPN接続提供業者と契約します。オンデマンドVPN接続業者は医院と業者のコンピュータの間にオンデマンドVPN回線を構築するための機器やソフトを提供します。オンデマンドVPN接続業者のコンピュータは上記の閉域IP-VPNネットワークに接続しているので、電子レセプトのデータを中継して基金や連合会に接続します。

 オンデマンドVPN接続業者には、NTTコミュニケーションズ、富士通、三菱電機などが認可されています。インターネットの回線費用に上乗せしてオンデマンドVPN接続費用として月額数千円の費用がかかります。設定等は数万円の初期設定費用がかかりますが業者の出張サービス等が受けられますので良くわからないという方にも安心して利用できそうです。でもコストはかかります。

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